第八回:脚本家 竹山 洋氏

《おしえて!プロフェッショナル》

こんにちは、コーナー担当のリズです♪

このところNHKの話題で持ちきりのサブセレですが、脚本家を目指す方にとってNHKの大河ドラマ・朝の連続テレビ小説は〝夢の舞台〟ですよね。

それこそNHKの生放送でお話ししましたが、私の祖父は連続テレビ小説『おはなはん』(昭41〜42)の原作者、父は『鳩子の海』(昭49〜50)の作者であり脚本家です。

私自身は一視聴者に過ぎませんが、連続テレビ小説も大河も〝NHKドラマ班の総力〟として捉えています。


そんな〝総力〟の舵取りを担う脚本家は、自身の旗を掲げ、格闘します

父は気難しく、トラブルメーカーでもあったので、『鳩子の海』の途中でNHKと決裂してしまったようです。連続ドラマ小説については後年、「15分で起承転、起承転、それを毎日だよ。あんなに苦しい仕事はなかった」と、申しておりました。

それ以外でも、父が格闘し、苦しんでいるところは何度か見たことがあります。苛立っているときには、理由もなく幼い私を殴りました。

それなのになぜ、私は日本脚本家連盟のスクールに通い始めたのか? なぜ脚本家という仕事に興味を持ったのか?

日脚連に講師でいらっしゃった先生方は、口を揃えて「脚本家になったなら、君たちは必ず絶望する」と、仰いました。


2002年。その年の大河ドラマは『利家とまつ~加賀百万石物語~』でした。

大ヒットとなった作品です。恥ずかしながら、そのときまで私は脚本家・竹山 洋先生を存じ上げませんでした。1996年『秀吉』も手がけられた方です。

NHK『スタジオパーク』でお姿を拝見したのが、最初でした。

万年筆で手書きされた『利家とまつ』初回の原稿、それを6回も書き直しされたというお話でした。


その頃の私は2時間ドラマのプロットに関わっていました。書き直しても書き直してもダメ。現場でOKが出ても、上からダメが出る。正解が見えない。

父に相談しても「脚本家に許された唯一の権利はなんだと思う? 降りることだよ」と、言うばかり。

そんなこともあって、大河執筆二作目にして、6回の書き直しをされた〝竹山 洋〟とは「いったい何者なのだろう」という気持ちになりました。


私の行動範囲は本当に狭い。その狭い範囲内で、ある頃から「何者だろうという美男美女を見かけるようになりました。長身でスタイリッシュな男性と、まるで絵画から飛び出したような女性。

そのおふたりが、誰あろう、竹山ご夫妻とは!

画面で拝見したときには、ここまで長身の方とは思わなかったのです。そして奥様が、こんなにもお美しいとは。私にとって、この巡り会いは大変な幸運でした。


正直、私の「脚本家で食っていきたい」という情熱は、〝脚本を途中で放り出した父〟の足元にすら及びません。なによりまず〝父という人間〟と対峙することが先決だったのかもしれない。そのためのツールが、脚本だったのかもしれない。

途中で放り出した、父。

一戦一戦を闘い抜いて、尚も最前線を疾走し続ける〝竹山 洋〟という人物。

なにが違うのだろう。なにか共通点はあるのだろうか。

そんな自分勝手な気持ちで、私は竹山先生とお話しをさせて戴くようになりました。しかし、いつの間にか竹山先生の〝世界〟に入り込んでいました。その〝世界〟こそが、私の疑問への答えだったのです。


竹山先生は、父以上に〝脚本家としての苦しみ〟をご存知でした。そして父の百倍も〝誠実〟です。私のような若輩者に対しても、真っ向から、ごまかしのない態度で接してくださいます。

唯一無二のストーリーテーラー。

創作をする脚本家という人種が、人生という真実のドラマを真っ直ぐに駆け抜けている。それを目の当たりにして、私は答えを得ることができたのです。

絶望に溺れない、真剣の刄。それが、父との違い。


父と同じところも、ふたつ発見しました。〝純粋〟と〝情熱〟です。

父の場合は〝純粋で情熱的な嘘つき〟ですが、その点は娘として〝愛すべきキャラクター〟と受けとめていました。

2010年、父が旅立ってからの私は虚脱状態でした。何度もぶつかって、言葉で殴りあってきたひとが消えた。なにを書いても、もう父に読ませることはできない。ガス欠になったようでした。

その間には、竹山先生に信じられないような失礼をしたこともあります。父のせいにはしません。私が馬鹿なのです。ですが、そのときも先生は、真っ正面から向きあってくださいました。


どうしたらいいのか、わからなかった。

それでもいま、「また書こう」と立ちあがりつつある。

もはや書くことは、父を理解するためのツールなんかじゃない。

竹山先生は「書いてるの」「書き続けなさい」と、私に声をかけ続けてくださいました。そのたび、光が射したように嬉しく、同時に、書けない自分が恥ずかしくなりました。

「りーちゃん、書かなきゃダメだよ」は、父の口癖でもありました。

きっと、私に向けてだけではない。くじけそう、でも書きたい、書いていたい。そんなみなさんに向けての言葉なのでしょう。仕事じゃなくたっていい。

よし!書こう!


《今回のプロフェッショナルさん》

↑先日、旭日小綬章を受章されたときのパーティーで、ジャズ(ウッドベース)の演奏を披露してくださいました。格好良い!

  • お名前:竹山 洋 先生
  • ご職業:モノ書き
  • 1946年生まれ、早稲田大学文学部卒
  • 代表作:今回は大河ドラマに焦点をあてましたが、松本清張作品など数々の名作を手がけていらっしゃいます。

《十問十答》

*今回は私の独断で、7と8の質問を入れ替えてみました!

1)ご職業をお聞かせください。また、このお仕事に就かれて何年ですか?

モノ書き。26の時に、TBSテレビで作家デビュー。45年、モノ書きで生きている。

2)この職種の魅力、社会的役割はなんだと思いますか?

夢と感動を与える素晴らしい仕事です、 心のデザイナーだと思っている。

3)好きな擬音はなんですか?

シューッ というUFOの音。

4)この職業を目指し始めたのはいつですか?

映画館でアルバイトをしていた中学生の頃から映画の世界に憧れていた。俳優になりたかったが非常に恥ずかしがり屋で、俳優を断念し、演出の道に入った。いつのまにか、脚本が中心になったが、近々 映画監督をするつもりです。 素晴らしい映画を作りたい。その一念で生きている。

5)誇り、エピソードをお聞かせください。

誇り。脚本家の誇りとは、自分が美しくいつも綺麗な夢を見ている人間だと信じ切り、必ず傑作を書くという信念を持つことである。

エピソード。 話すと芸能界が崩壊するような話があるが、それは言えない。 悪魔の巣窟だということしか言えない。 悪魔たちと戦ったり、仲良く遊んだり、誠にたのしかった。

6)「これだけはやめられない」お仕事と無関係の趣味はありますか?

なし。 仕事に関連した、調べごと、原作を読んだり、舞台になる場所を歩くとか、関連している人に会うとか、そういう事をしている時が一番好きです。 強いて言えば、ギャンブル。負けると嬉しい。 きっと人生では、勝つだろうと思う。

7)お気に入りのジャズナンバーはなんですか?

マル・ウォルドロンの「オール・アローン」 「レフト・アローン」 寂しいときに、昔働いていたジャズ喫茶でウィスキーをのみながら、ジワっと涙──若い頃は楽しかった。 

8)「これだけは観ておいたほうがいい映画」はなんですか?

ビットリオ・デ・シーカ「自転車泥棒」 市川崑「ビルマの竪琴」

 好きな映画は、数え切れない。しかし、最近のものは、あまり関心がない。

9)この職業を目指す若人に一言。

「光を」

10)天国(極楽)に着きました。神様(仏様)は、あなたになんと声をかけると思いますか?

「光の人よ」


《まとめ》

本当に真剣にお答えくださり、お人柄が表れています。

2、心のデザイナー!素敵

4、俳優さんとしても成功されたのではないか、という立ち姿でいらっしゃいますよ。でも、先生が脚本家でいらっしゃることは、日本のテレビ・映画業界にとっての財産です。〝恥ずかしがり屋〟でいらっしゃるのは、なんとなく私も察しておりました(笑)

5、美しく綺麗な夢、を、見るまではなんとかなるかも?ですが、それを〝傑作にする信念〟が難しいんですよね。私のような凡人は、書いているときは夢中でも、我に返ったとき「あちゃー」だったりするんです。信念が足りないんだなぁ。

〝芸能界が崩壊する〟エピソードが気になる……

7、『オール・アローン』『レフト・アローン』は公式動画がなかったので転載できませんが、ぜひ、聴いてみてください。ペーソス溢れる、成熟した音楽です。

8の『自転車泥棒』も悲哀に満ちていますね。母の好きな映画でもあります。


今回は、私の父も脚本家だったということで、かなり私情を挟んだ内容になってしまいました。竹山先生、ごめんなさいっ(>_<)

竹山先生は勿論のこと、私は〝脚本家という人種〟が好きです。

製作陣一丸となって、ドラマを作る。

現場でのぶつかりあい、視聴者との向きあい。

小説家とは違って、脚本家は独りでありチームであり、常にオンタイム対戦型。視覚的な抽象と具象の違いもありますよね。

もちろん、脚本家で小説を書かれる方もいらっしゃいます。そのときには〝脚本家スイッチ〟をオフにしていらっしゃるんじゃないかしら。

推測に過ぎませんが……。

女優という生き物〟も、少なからず理解しておりますよ(笑)

竹山先生が監督される映画、楽しみにしておりますね!


竹山 洋先生、いつもありがとうございます!お時間をさいて戴き、感激です。悪魔と戦い、踊り、素敵な作品を作り続けてください。

第九回は『野坂昭如、渡辺淳一、文豪たちの伴走者!元中央公論編集長・キャスターにして文芸評論家の水口義朗さん』です!

こう、ご期待っ (*´∀`)ノ

Subcelebrity Race ~サブセレ

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