映画『クワイエット・プレイス』のレビュー

生まれてこのかた、僕はホラー映画が怖いと思ったことがありません。ですから実質、観る意味がないんです。

ご無沙汰してました、酒井です。

大学時代の友人がホラーマニア(特にB級)で、部屋に呼ぶと要らんDVDを携えてくるもので、なぜなのか?と。なにが面白いのか?と訊いてみたところ、彼曰く

ホラーとギャグマンガは同じ精神構造でできている、主人公が悲惨なら悲惨なほどイイ

と。なるほどね。

なぜ人里離れた山荘で若者が馬鹿騒ぎをするのか、携帯が圏外なのに別行動をとるのか、ビッチから殺されるのか、犯人が不死身なのか……矢継ぎ早に質問を浴びせたところ

「面倒臭い。映画『キャビン』に全ての答えがあるから観ろ」

と。なるほどね。

それ以来、お約束を踏まえたうえでホラーを楽しむようになりました。

前置きが長くなりました。

やっと休みがとれたので『クワイエット・プレイス』を観てきました。


これよりネタバレを含みます。

映画館自体が久しぶりだったんで考えが及ばなかったのですが、この映画は『静かに観られるひと』としか観ちゃいけない

タイトル通り、静けさ、ちょっとした物音が重要なので、ポップコーンをワサワサ探るひとやコンビニ袋をカサカサするひとがいたら台無し。

だけど、映画館の音響設備で体感したほうがいい内容。

監督は、作中お父さん役のジョン・クラシンスキー。主演は彼の奥さんで、やはり妻役のエミリー・ブラント。ブラントは心理スリラー『ガール・オン・ザ・トレイン』での好演が記憶に新しかったので、期待していました。


今作は『盲目だが異常に聴覚が優れているバケモノが、ちょっとした物音に反応して襲ってくる』という、ただそれだけの話です。

僕的には、バケモノが訪れるまえの平穏な日々の描写、回想などが一切ないところが好きでした。パツンと切れる、終わり方も見事。ブラントの演技も期待を裏切りませんでした。

なにより、実際に聾者であり、聾者を演じている、娘役のミリセント・シモンズが素晴らしかったです。憂いを帯びた少女で、雰囲気がありました。


細部はお約束通りで、始まった途端に「コイツ死ぬな」って感じのひとが死にます。

伏線となる『クギ』も、予想通りのトラブルを招きます。音の出る金槌が使えない事情はわかるが、飛び出たクギは即座に修繕したほうがいいんじゃないかな。


そして、冒頭で触れた『映画館という環境』について。

水を打ったように静かです。『全米沈黙』という謳い文句通り。

なのに、僕の隣の女の子だけが

「ヤバイヤバイヤバイ」「クるクるクる」「うしろうしろうしろ」

と、多言。まえのひとが振り返るくらいウルサイ。しかもスマホをオフってない。

この映画に限らず、映画館では静かに。マナーを守ること


物語に戻ります。

致命的に、僕は、CGのクリーチャーが怖くない。感情移入もできないし、人間が想像したモノの範疇を超えていないとヒく。今作に登場するバケモノは、件の隣の女の子が

「なにあれ、虫?」

とコメントしていたように(笑) 蜘蛛っぽい四肢に蟹みたいなディテールの、人っぽい頭部を持ったお粗末な造り。耳っぽい部分だけ丁寧に描かれていましたが、所詮CGっぽいCG。

屈強なおじいさんが襲ってくる『ドント・ブリーズ』のほうが100倍エキサイティングでした。


監督のクラシンスキーも参考にしたという『ドント・ブリーズ』『ゲット・アウト』は僕も観たんで、当然、比較対象になりまして。上記2作のゾワゾワ感や笑っちゃう感は「ナイな」が結論でした。どちらの作品も『ウェットな要素皆無+敵が人間だったこと』が僕のツボだったのかもしれない。


夫婦の絆とか、親子の関係性とか、蹴散らすくらいじゃないと。

怖いかどうかより、笑っちゃうくらいじゃないとホラーは面白くない、という持論ゆえ。

メーターが振り切れていないこと、クリーチャーのデザインがイマイチなこと、隣の女の子がウルサイこと、これら踏まえて……

☆☆☆★★(3 /5点)

……以上、久々のレビューでした。

リアルに怖かったシーンは唯一、穀物に埋もれるシーンでした。ビーズクッションから立ちあがれない、アレが底なしになった状況。クリーチャー関係ない。

でもまあ、映画館で観たほうがいいですよ。静かにね。


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