今年の夏は暑さがギンギン過ぎて、頭が「カッー!」っとなっておりましたが、涼しくなってまいりますと、頭も「すっ~」っとして何故か古典に親しみたくなったりします。そんなわけで、仕事中に古典落語を聴きながら文字修正(通称赤字)の作業などをしておりますと、目から入ってくる文字情報と、耳から入ってくる日本語情報がごちゃごちゃになって「うぎゃー!」となる時があります。あっ、どうも岩崎(♂)です。
今回ご紹介させていただく本は「古今亭志ん生」論をビートたけしさんが語り口調で綴った【やっぱ志ん生だな(フィルムアート社)】という本です。
これは意外でしたね~。何が意外かって!? それは、たけしさんといえば世間的には「立川流」シンパとしての印象が強いのでは? と思っていたからです。
たけしさんは「談志師匠を尊敬している」と公言し、「赤めだか」でお馴染みの談春さんに弟子入り(形だけでしょうが)して「立川梅春」を名乗り、タイタンのライブでは「人情八百屋」を “ アウトレイジ ” の様な迫力で演じておりました。
実は僕も4年位前までは「談志の落語しか聞かない」というファナティックな立川流シンパだったのですが、ここ数年は、談志さんのライバルとされていた「古今亭志ん朝」にどハマりしてしまいました。
この現象をプロレスで例えると「猪木派(過激思想)」が「馬場派(ロマン主義)」に宗旨替えしたといえば分かりやすいでしょう。
談志さんといえば、落語を「業の肯定」と表現し、その名言が一人歩きしてしまった為か、晩年は「イリュージョン」なる抽象的表現を多用する様になり、その芸論を理解するのには難解さを増しました。
ところが志ん朝さんは、落語とは「狸や狐の出てくるお話し」と、粋な芸論を残しました。
そんな志ん朝さんの師匠であり、実の父である “ 昭和の名人 ” 「古今亭志ん生」に興味が湧かないわけがありません…。しかも僕は “ キタニスト ” 。もう一気読みですよ!!!
天才が他の天才について語る時、どうしても僕の様な凡人には解りづらくなるもんですが、この本では “ 天才たけし ” が自分のネタと志ん生さんのネタの構造を比較しながら説明されているので非常に読みやすかったですし、解りやすかったです。ネタや映画の作り方を「因数分解」で説明するあたりは脱帽ですよ! ただ、「間」や「声質」は文章で説明するのには限界があるのかもしれませんね~。後半で語られている「危うさ」については「色気」に通じる事かもしれないと思いました。やっぱドキドキさせてくれる存在にトキメくんですよね~、人間って。
また、帯に鶴瓶さんが書いている事とカブってしまうかもしれませんが、ジャンル外の人間であるたけしさんだからこそ書けるエピソードもあるのでしょうね~。そして、この本の構成を担当されているのは九龍ジョーさん。サブカル界隈では腕利きとして名の通ったライター・編集者さんです。タネを明かしてしまうと、面白い事を約束されてる本と言っても過言ではありませんね~、この本は。
志ん生さんといえば、高座で寝てしまったというエピソードが有名ですよねぇ。その寝姿を見たお客さんが「寝姿も名人芸だ!」と唸ったという伝説があります。志ん生さんやたけしさんの様な “ 天才芸人 ” って呼ばれている人の「伝説的エピソード」が人伝えで耳に入ってくることが多々ありますが、その伝説が本当なのかどうなのかはどうでもいいんです。「あの人なら本当かも…」って思わせてくれる事も芸の一部として楽しめばいいのです~。
追伸. 先日、図書館で資料探しをしていたところ、司書さんから「栞をプレゼントするので、一枚選んでください」と4パターンのイラストが描かれた栞を見せられました。 “ 慎重 ” に考慮した結果「志ん朝」の栞を選ばせていただきました。
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