眠れる森の美女は王子様の出現をただひたすら待たなければならないのでしょうか? 性的な興味が強くなるお年頃の娘さんを父親から隔離するという風習はあらゆる民族であったのだそうですが、眠り姫やラプンツェル、白雪姫などはそれを寓話化したという説があるそうです。全寮制の女子校なんてのもそういう事情から発生したのかも知れませんね。あっ、どうも岩崎(♂)です。
五月革命の熱が冷めやらぬ1967年、「中国女」に主演した当時19歳のアンヌ・ヴィアゼムスキーは、ヌーヴェルヴァーグの旗手ジャン=リュック・ゴダール(当時37歳)と結婚するわけですが、その激しくも短い結婚生活を中心とした私小説【それからの彼女】を読んで思ったのは、少女アンヌは中年ジャン=リュックに父性の様なものを求めていたのかな~という事です。
今の日本でもオジさんが若い女の子にモテるといわれる理由は「懐の広さ」がその一因だと思うのですが、ジャン=リュックはハッキリいって懐狭いよ! っていうかヒステリックすぎるよ! 未婚の僕がいうのも何ですが、ジャン=リュックは結婚には向いてないです。
また、アンヌはアンヌで承認欲求が強すぎだよ! 今でいう「かまってちゃん」です。しかも極度の。
自己顕示欲の強いアンヌとヒステリックなジャン=リュックがデタラメ過ぎて、この本を読んでいるうちに、何かもう、終いにゃ笑えてきました。
一番面白かったエピソードは、ジャン=リュックがビートルズを主演に迎えて映画を撮るという企画がポシャったというパートです。企画内容は「トロツキー暗殺」で、ジョン・レノンがトロツキー役という、実現してたらさぞ面白かったであろう事が予想されます。
僕はジョン・レノンに対して非常に温厚な人のイメージを持っていたのですが、【それから~】を読む限り、かなりの癇癪持ちです。会う度にジョンとジャン=リュックは喧嘩ばっかしてます。ジョンとジャン=リュックは共に急進的なリベラリストなので、腐女子のお姉様方が使うターム「宗教戦争」の状態だったのかも知れませんね。「宗教戦争」とは同じ作品やキャラクターが好き過ぎて(価値観が同じ過ぎて)喧嘩になってしまうという、カトリックとプロテスタントになぞらえて使われてるタームなのでしょうが、共に革命思想のジョンとジャン=リュックではさもありならんといった感じです。
ジョンとジャン=リュックが喧嘩をしているテーブルの下に潜り込み、アンヌとポール・マッカートニーはのんびりとお茶を楽しんでいたそうですが、性格がよく表されている描写だと思いました。
【それから~】はジャン=リュックの考えや私生活が克明に記されいる本なので、映画史的に一級品の資料になる可能性のある本だと思います。映画好きな人は読んでみる価値がある本だと思いました。
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