あえて最初に辛口の事を言わせていただきますと、今年の1月にお亡くなりになられた梅原猛さんは一部のサブカル界隈からは嫌厭されていました。その理由は政治家とのズブズブの関係がその一因にあるかと思われます。あっ、どうも岩崎(♂)です。
哲学者である梅原さんが日本古代史や仏教関連の事を論じるのを心良く思ってなかった専門家や学者さんも沢山いた様ですが「稗田阿礼=藤原不比等説」や「法隆寺=聖徳太子一族の怨霊の封じ込め説」などはエンタメ目線で読んだら非常に面白いと思います。
僕は梅原さん関連の本で擦り切れる位に読んだ本が2冊あります。中上健次との対談集【君は弥生人か縄文人か】(集英社)と、今回ご紹介させていただく白川静との対談集【呪の思想】(平凡社)です。
簡単にいってしまうと、中上ファンであり、白川先生ファンなんです。僕。
梅原さんと中上との対談は「当に意気投合!」といった感じですが、【呪の~】での白川先生との対談は一部噛み合っていません…。
基本【呪の~】は甲骨文字・金文、孔子、詩経といった白川先生の研究成果を梅原さんがインタビューする形で話は進むのですが、たまに梅原さんの承認欲求が爆発します。「私自身も孔子やプラトンのような哲学思想だと思うので、彼らの気持ちはよく解るつもりです」と、ご自分を歴史的偉人と同列と思ってる顕示欲がダダ漏れしちゃてます。若手レスラーが看板レスラーに対してマイクアピールしちゃった感じです。
梅原さんは白川先生の口から “梅原説” を裏付ける様な意見を引き出したかったのでしょうが、白川先生は「証拠のない事は発表しない」というスタンスで、梅原さんの誘導尋問をのらりくらりと受け流します。例えば、梅原さんは白川先生から「周は遊牧民」「銅はメソポタミアから入ってきた」と承認して欲しかったのでしょうが “柳に風” です。
梅原さんが “珍説・奇説” “異端” あつかいされるのは、ロマンティストだからなんでしょうね~。ガチガチに固めた理論より「こうであったら面白い」というロマンが先行しているのでしょう。 実際【呪の~】は梅原さんのロマンが先行しているせいか、白川先生の本で一番面白く読ませてもらいました。また、白川先生直筆のノートの写真も載っているし、「サイとホコ」の見開きの図版も分かりやすかったです。
梅原さんといえば、何かと“怨霊”で読み解く人でしたが、ご自身が怨霊にならないよう、心からご冥福をお祈りいたします。合掌。
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