にゃんにゃん探偵チャーリーの冒険 ~ザ・ゲーム~・第16話 『草間彌生、あるいは水玉の向こうの愛と平和』

 現代美術の巨星であり、孤高の前衛芸術家として闘い続けた草間彌生さんが97歳でこの世を去りました。彼女がキャンバスや立体に刻み続けた無限の「網目」や「水玉」は、単なるポップなデザインなどではありませんでした。少女期から経験してきた幻覚や死の恐怖、そして戦時下や戦後の暴力的な社会の中で、自分自身を宇宙の中に自己消滅させ、世界と繋がろうとした壮絶な生存の痕跡だったのです。単身渡米した1960年代のニューヨークで、ベトナム戦争の狂気に抗い、裸の肉体に水玉を描くハプニングを繰り広げながら、「LOVE FOREVER(愛はとこしえに)」と訴え続けた彼女の姿は、国家や権力という巨大な暴力に対する、最も純粋で命がけの抵抗でした。

 ひるがえって、いまの日本の政治家たちの姿はどうでしょうか。権力闘争や総裁選のパフォーマンスに明け暮れ、敵意や排外主義を煽り、「軍拡」や「国家」という狭小な境界線を引くことに躍起になっています。草間彌生が水玉によって、あらゆる境界――人種、性別、国家、強者と弱者の分断――を越え、無限の愛と平和を提示しようとしたのに対し、権力者たちは自らの利権を守るために不気味な壁を打ち立て、市民を脅迫し、分断することに固執しているのです。その姿のなんと小さく、グロテスクなことでしょうか。

 政治家たちがどれほど虚妄の言葉で国家や国益を語ろうとも、彼女が世界に叩きつけた圧倒的な「生」のエネルギーと愛の叫びを消し去ることなどできません。国家という人工的な枠組みを超えて解き放たれた彼女の水玉は、権力者たちが作り出すいびつな支配の壁をいまも静かに打ち破り続けています。

 追悼の思いを抱えながら自宅のデスクで作業の手を止めると、膝の上ではチャーリーが丸くなって眠っています。規則正しく上下するその小さな背中と毛並みの模様を見つめていると、それがまるで草間が描いた一粒の温かな水玉のように思えてくるのです。

 狂気と分断が深まる世界の中で、僕は国家や政治の醜い境界線など遠く飛び越えて、この膝の上の無垢な命を、ただ愛おしみます。今夜は彼女の偉大な魂の旅立ちに、そして永遠の愛と平和に、静かにグラスを傾けることにしましょう。あっ、どうも。岩崎(チャーリーの飼い主)です。

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