J・L・ボルヘス他【ラテンアメリカ怪談集】(河出書房新社)を読んで

 「私の独身生活には二つのいいことがある。それは、読書と食事だ」とは今回ご紹介させていただく【ラテンアメリカ怪談集】(河出書房新社)に収録されているレオポルド・ルゴネス著【火の雨】に出てくる台詞なのですが、まったくその通りでございます。あっ、どうも岩崎(♂)です。

 日本の怪談では、怨霊や幽霊の出てくる話と相場は決まっているもんですが、【ラテンアメリカ怪談集】は怨霊や幽霊の説話集ではなく、ラテンアメリカ諸国の作家による幻想短編小説集といった方が的を得ているかと思われます。

 一口に幻想小説といいましても作家によって作風は様々なわけで、不条理、SF、シュールレアリズム、黙示録文学などを挙げられますが、“奇妙な味” というジャンルが【ラテン~】を語る上で “言い得て妙” なのかな~ と思いました。謎解きの様でいて、まったく謎を解かない…。というか、謎なんてどうでもよくなっています。

【ラテン~】には15の短編が収録されているのですが、僕が読んだ事のある作家はボルヘスとコルタサルだけでした。何せ日本初登場の作家もいるので、ラテン小説ファンには垂涎モノでございましょう。

 僕が一番印象に残った作品を挙げさせてもらうと、アウグスト・モンテローソ著【ミスター・テイラー】という作品です。主人公ミスター・テイラーはアメリカで無一文になり、南米アマゾンにバックれます。ミスター・テイラーはひょんな事から現地の首刈り族から人間の首をもらい、その首をアメリカに送ってみたところ、大金で売買できたという…。味を占めたミスター・テイラーは部族の長と組み、アメリカで首を売る商売に手を染めていく事に。部族は経済が発展し、法も整備され、近代国家化されていきます。しかし、経済を維持するにはより多くの首が必要となり、首を刈るには法の厳罰化が急務となり…。

 他にもレサマ=リマ著【断頭遊戯】やフエンテス著【トラクトカツィネ】が面白かったのですが、【ラテン~】を編集したのが鼓直さん(【百年の孤独】や【夜の淫らな鳥】の翻訳でお馴染み)なのですよ~。ラテン文学といったら鼓さんで間違いナシ!

 この春、皆様も幻想文学を読んでショートトリップしてはいかがでしょうか~!?

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