高野秀行×清水克行【辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦】(集英社インターナショナル)を読んで

 そろそろ本気で年賀状の制作に入らなければと思う今日この頃ですが、先送りしている毎日です。仕事も年末進行で進めなければいけないのに一体どうしたらいいでしょう? あっ、どうも岩崎(男の方)です。

 そんなぐうたらな生活を送っている僕が今回ご紹介させていただく本は、高野秀行さんと清水克行さんの対談集【辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦】(集英社インターナショナル)という本です。


 まずはタイトルを見て「ずいぶん厳ついタイトルじゃん」と思った方もいる事でしょうが、これは前作【世界の辺境とハードボイルド室町時代】ありきのタイトルなんです。そのタイトルも、村上春樹の【世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド】のパロディというお茶目なアングルなんで、タイトルにビビらずに脱力してポップな感覚で読む事ができますよ~ん。

 【辺境の怪書~】は高野さんと清水さんが課題図書を読み、その感想を語り合うという対談本なのですが、BL目線でこの本を読むと、おっさんがイチャイチャしながら好きな本について語らってるという微笑ましい光景が想像できます。実際対談の内容を読んでいてもお二方の会話はかなりスィングしています。

 【辺境の怪書~】で取り上げられている課題図書は、高野さんが世界の辺境を取材するノンフィクションライター、清水さんが日本中世史を専門とする学者さんという事もあり、専門書&学術書色の強い本が多いというのが特徴でしょう。唯一、町田康さんの【ギケイキ】が純エンタメです。

 「小説や実用書は読むけど学術書や専門書は読まない」という人も結構いると思いますが、学術書も〝角度〟をつけて読めば面白く読む事ができます。【辺境の怪書~】を読めばその〝角度〟が何となく分かると思いますので、「たまには学術書でも読んでみようかな~」なんて思っている人はまず【辺境の怪書~】を読むとよいかと思われます。

 僕が【辺境の怪書~】を読んで感じた事は「世の中にはまだまだ知らない事がたくさんあるんだなぁ」というアホな子の様な感想です。知った気でいたのに知らない事ってたくさんあるんですよね~。戦略的な原始生活を送る少数民族〈第一章 ゾミア〉、日本の辺境は東アジアの国際情勢から見たら中心に近い〈第二章 世界史の中の戦国日本史〉、イスラムの文化圏の広さや宗派の多様さ〈第三章 『第旅行記』全八巻〉、認知考古学〈第七章 列島創世記〉などなど…。【辺境の怪書~】を読む事により新たな知識欲が芽生える人は大勢いるのではないでしょうか。

 例えば、兵藤裕巳ファンなら日本中世の民俗、吉田敦彦ファンなら西洋古典や縄文~日本の古典期についてはある程度は知っているでしょう。白川静ファンなら苗族をはじめとする「南人」と呼ばれていた少数民族について多少は知っている事でしょう。しかしそれはあくまでも「多少知った」というだけで、そこからさらに新たな本を読んで「何を知らないかという事を知る」という作業こそが大事だと思うのです。俗な言い方をすれば「知的好奇心の冒険」という感じでしょうか。

 僕は「興味の無い事に関しては知らないまま死んでいこう」と常々思っている(はっきりいって経済の事とかまるで知りません)のですが、自分のアンテナに引っかかった事に関しては掘り下げて知りたがる「知識欲旺盛な知識スケベ人間」なのです。【辺境の怪書~】を読んでアンテナに引っかかった案件については今後ゴリゴリに掘り下げようと考えていますので、年賀状は後回しにしときます。


 余談ですが、【辺境の怪書~】で紹介されている読書術、見返し(表紙を開いて、次にある紙)部分にメモをする『藤木・清水法』を実践しようと思ったところ、【辺境の怪書~】は見返しの紙が濃い茶色で、メモをしても読みづらい事に気がつき「なんじゃこりゃ~」と思わず声に出してしまいました。


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