「アートはハードルが高そうだから苦手」なんて人も多いことでしょうが、アートもちょっと目線を変えれば爆笑案件に早変わりするもんです。例えば、便器にサインをしただけのマルセル・デュシャンの『泉』なんて作品は、思わず「クッス」としてしまうもんです。あっ、どうも岩崎(男の方)です。
そんなわけで、今回ご紹介させていただく本は、山田五郎×こやま淳子【ヘンタイ美術館】(ダイヤモンド社)という本です。
【ヘンタイ美術館】は山田五郎さんが先生役になり、コピーライターのこやま淳子さんにルネッサンスから印象派までの絵画とアーティストの面白い見方や歴史をレクチャーするという構成になっています。
例えばダ・ヴィンチ。
パブリックイメージとしてのダ・ヴィンチは「天才」というのが通例となっていますが、はっきりいってダ・ヴィンチとは「変なおじさん」と言っても過言ではないでしょう。なんせ納品された作品が異様に少ないという…。あの『モナ・リザ』も終生手放さなかったそうです。
当時のアートシーンは、教会や王侯貴族の発注があり、そのクライアントの意向に従い作品を作り、それを納品するというのがアーティストとしての仕事だったのですが、ダ・ヴィンチは金銭で揉める、納期は守らない、しまいにゃ途中で仕事を投げ出す、という迷惑ジジイの典型だったのです。
映画『ダ・ヴィンチコード』でお馴染みおの『最後の晩餐』も、通常の壁画は「フレスコ」という技法で描かくのが常識なのですが、なぜかダ・ヴィンチは「テンペラ」という画材で描いてしまったがために、完成当初から色が剥がれボロッボロだったそうです。完成当初から現在まで、常にボロッボロで、常に修復作業を続けなければならいという…。そんな迷惑ジジイだったからでしょか、当時はバチカンからの発注がアーティストにとって最大の栄誉だったらしいのですが、バチカンはダ・ヴィンチには発注しなかったといいます。
納品された作品が少ないので、ダ・ヴィンチといえば『モナ・リザ』か『最後の晩餐』しか思い浮かばない人も多いでしょうが、素描やスケッチは大量に残っているので、ヘリコプターの原型みたいなスケッチを見たことがあるという人はいると思います。しかし、あんなものはもちろん飛びません。ダ・ヴィンチのスケッチは実用化できないものばかりだったのですが、その突き抜けたアイデアの突飛さが「天才」とよばれる所以なのかもしれませんね。
ダ・ヴィンチも面白いですが、ドガも面白いです。ドガの踊り子(バレリーナ)を描いた一連の作品群には、なぜか小汚いハゲオヤジが描き込まれています。これは現在の映像作品にも応用されている方法論なので、興味のわいた方は一読の価値があります。
【ヘンタイ美術館】で残念なのは、最初の数ページだけカラーで、あとは全部モノクロページなので、紹介されている絵画の色合いを見たい方は、ネットや画集など、別の資料を見ながら読まなければならないという点です。予算の関係上、オールカラーは難しかったのでしょうね。
実はアートシーンは印象派以降の近代美術や現代美術の方が面白案件は多いのですが(宗教画や歴史画ではなく、自己表現的作品が主流になるので)、それを楽しむためには、ある程度過去の作品や歴史を知っていた方がより楽しめます。例えば前述のマルセル・デュシャンがなぜあんな作風(ダダイズム)に至ったのか? それを考えるには、それまでの歴史を知っていた方が数倍面白いのです。しかし、小難しい専門書を読むのは面倒臭いという人は多いと思います。そんな人こそ【ヘンタイ美術館】で面白おかしくアートの予備知識をインプットする事をオススメします。
0コメント