先週、なんとなく気分を変えたくて、丸の内の三菱一号館美術館へ足を運びました。そこでは今、「ルノワール×セザンヌ」展が開催されています。展示の意図はとても明快で、誰にでもすぐに飲み込める内容です。
会場には、花や果物の静物画、田舎の風景、裸婦や水浴びの情景が並んでいて、同じモチーフをルノワールとセザンヌがどう描いたのかを見比べることができます。このような展示方法は、絵を見慣れていない人にとっても、アートという記号を解体しながら楽しむ鑑賞が約束されているのではないでしょうか。夏休みシーズンの企画としてはとてもいい企画だし、小・中学生の自由研究なんかにも悪くないと思います。
ルノワールとセザンヌは、同じ印象派という土壌に生まれた画家ですが、そこから先は随分と違う道を歩くことに…。
ルノワールの絵には、真珠色の肌、漂う光、遠い午後の空気がいつもやわらかく漂っていて、その色彩の中にいると、自分の輪郭が少しだけ溶けていくような気がします。
一方でセザンヌの絵は、どこかひずんだ視点や、変な形を積み重ねながら、ひとつの対象を複数の記号へとほどいていく感じがして、そういうところが、後のキュビズムや抽象画に繋がっていったのでしょう。
このところ、世界はなんだか緊迫していて息苦しい感じがしますが、アートの中には小さな幸福の記号がまだちゃんと息をしていて、そのことを思い出すだけでも少しは心がやわらぎます。
個人的には、ルノワールのまぶしい色や、セザンヌの変な形を眺めたあと、オマケ展示室の端っこにひっそり置かれていたコローの『サン=ジェルマン=アン=レーの小道』を見たときが一番癒されました。あの小さな道を抜けると、その道の先には、チャーリーが喉をゴロゴロ鳴らしながら飼い主を待っているかもしれないにゃん。あっ、どうも岩崎(チャーリーの飼い主)です。
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