にゃんにゃん探偵チャーリーの冒険 ~Love and Cats・第1章~

 先日、草間彌生美術館に行ったのは、本当にただ〝なんとなく〟でした。3連休の最終日、予定が空いていて、天気もよくて、「散歩のついでに行ってみるか」くらいの軽いノリです。深い理由なんて特にないんですが、理由がない外出って、妙に気楽でいいですね。自由で、肩がふっと軽くなる感じがします。

 そんなこんなで、館内に入ったら、来場者の八割くらいが外国の方で、ちょっと驚きました。ここ、ほんのり新宿の外れなんですけど、入り口の空気は完全に、他民族が集う、なんでも混ざってるヨーロッパの路地みたい。最近の日本では差別だのヘイトだの、あまり耳に入れたくない話題が多いせいか、こういう〝ただそこに多様な人たちがいて、静かに作品を観てるだけ〟の光景が、とても澄んでいて、安心感さえ覚えました。

 『深々とした青い空のしとね』の自然光を取り入れた、『白雲を静かに』登る様な『宇宙の広々とした天国の階段』を上り、3階に着くと、その壁には草間彌生の詩が書かれていました。そこで僕は思わず足が止まりました。

 詩って「読むぞ、読むぞ!!」と気合いを入れると逃げるくせに、こういう場面だと、心のヒダにヌルっと入り込んでくるもんです。じわっと沁みちゃうというか、「言葉は説明じゃなくて交感なんだな」と素直に思いました。〝テクストの快楽〟ってこういうことかもしれません。

 その詩、『戦いのあとで宇宙の果てで死にたい』を引用させていただきますので、『ねむれぬ幾夜中のしじま』を過ごしている方は『自我をはなれ』、心のヒダに、『愛』をヌルッと入れてみてください。あっ、どうも岩崎(チャーリーの飼い主)です。


すべての人々に愛はとこしえと叫びつづけてきたわたし

そしていつも生きることに悩みつづけ

芸術の求道の旗をふりつづけてきた。

生まれいでてこのかたそして

今迄走りつづけてきたのだった。

世界という檜舞台でいくたびかの

昨日の衣を常に新しい衣に脱皮しながら

膨大な作品群を造りつづけてきた

このわたしの「道程」は、真夜中の灯の下で

ねむれぬ幾夜中のしじまに励ましてくれる

そしてもっともっと愛を世に叫び刻印を残したい。

世界の争いや戦争やテロや貧富の汚泥をのりこえることを

心から願って止まない。

人々が平和にくらせるようにと

わたしの願いはつきることもない。

芸術の力をもって斗(ルビ:たたか)っていきたいのだ。

芸術の心のかぎりの求道のいしづえをもって

人々に仕え社会に貢献したい。

そのゆきつく先は、わたしはやがて老いて

宇宙の広々とした天国の階段をのぼりつめて、

白雲が静かにつづくしとねで

わたしは自我をはなれ

深々とした青い空のしとねで

ゆったりとねむりつづけるだろう。

そして地球にサヨナラを伝えるのだ。


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