来年の東京オリンピックに間に合わせるためでしょうか、最近は夜中でもガンガンに道路工事をやっていてうるさいです。もちろん現場で働いている人には何の罪もありませんが、こんなズサンな道路計画を立てたのは一体どこのアホでしょうか。「ただ静かに暮らしたい」と言っていた「キラークイーン」のあの人の気持ちが少し分かった気がします。あっ、どうも岩埼(♂)です。
さて、今回ご紹介させていただく【死美人】(河出書房新社)は多少ややこしい点があるので、まずは整理させていただきます。
【死美人】はボアゴベーの【ルコック氏の晩年】という作品を黒岩涙香が翻訳し、新聞で連載していたのですが、後に乱歩が現代語訳して出版する事になります。
ところが、乱歩が現代語訳作業をする際に参照とした涙香の連載を単行本化した本が、編集ミスで一話分原稿が脱落したまま出版されたという曰く付きの本だったのですよ〜。
その脱落箇所は研究者が指摘するまで気がつかれなかったらしく、乱歩版でも訂正される事なく出版されてしまってます。どうです、多少ややこしいでしょ!?
てか、どの部分が脱落したか知らずに読んでいたのですが、全く気にならずにスラスラ読めました。
【死美人】というスリラー感漂うタイトルで乱歩訳となると、乱歩の初期短編の様なエロ・グロ・猟奇的なストーリーを予想してしまう方もいる事でしょうが、【死美人】は純然たる大衆娯楽の探偵小説といって過言ではないでしょう。
最大の特徴としては、登場人物が全て日本人名に変換されているという、何だかちょっぴりシュールなプロットにあると思います。
それでも主人公の老ルコック氏だけは「零骨」と本来の音を多少は残していますが、零骨の右腕として働き、他作では主人公としてシリーズ化もされているピードゥシ探偵は「稗田」とその原型が全くなくなっています。
さらに、零骨の息子は「善池類二郎」、その許嫁は「誉田照子」、死美人は「お鞠」老零骨氏の後継者と目される探偵は「鳥羽育介」鉄道職員は「倉場倉太郎」などなど…。
昨今の「スゴイ」ミステリーに比べると牧歌的な雰囲気があり、誰が犯人か思ったよりも早く解ってしまいますが、それでもフィナーレに向けてドキドキさせてくれる展開と珍妙な日本人化ネーミングは下北沢辺りの小劇団の演目っぽくて、お好きな方に垂涎でございましょう。
また、今書の解説には初版本の脱落話が掲載されているので、好事家にはタマらんアングルかと思われます。
道路工事がうるさくて夜眠れない様な人は、牧歌的ミステリーを読んで気持ちを落ち着かせると、穏やかな気持ちになれるかもしれませんよ〜。
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