C・J・チューダー 著【白墨人形】(文藝春秋)を読んで

 人間という生き物は往々にして〝自分の思いこみ〟を〝真実〟と錯覚してしまう生き物の様でございます。

 先日、近所のコンビニに買い物に行きました。

 その際、お惣菜数種と飲み物数種を買い物カゴに入れレジに持っていったところ、外国人の店員さんから「箸ハ何本いりマスカ~!?」と聞かれました。

 僕は「いりません」という台詞と共に「no, thank you」「ストップ!」の意思表示のジェスチャーとして、手のひらを広げて店員さんの方に向けました。

 するとどうでしょう、店員さんはゴッソリと10本も割り箸をレジ袋の中に入れるじゃありませんか!

 僕は「ストップ!」のジェスチャーは万国共通だと思い込んでいたのですが、店員さんは広げられた指の数だけ割り箸を要求されたと捉えたのです。なんというボタンの掛け違え! あっ、どうも岩埼(♂)です。


 今回ご紹介させていただく本は、C・J・チューダー 著【白墨人形】(文藝春秋)とい本です。

 まずは帯に「スティーブン・キング強力推薦」と書かれているのでホラーだと思ってしまう方もいる事でしょうが、この本はミステリーです。しかも、最後の1ページを読んで初めてプロローグの意味が分かるという、憎たらしい位によくできたミステリーなのです。

 主人公はある日突然送られてきた謎の手紙を読んで、少年時代に体験した美少女バラバラ殺人事件を思い出しちゃいます。

 その少年時代の回想シーンと現在進行形のシーンが交互に展開されていく事により事件の〝真実〟が浮かび上がってくるというのが【白墨人形】の展開なのですよ~。

 なんせ、最後まで目が離せない展開になっているので、ぜひ皆様にも謎解きに挑戦していただきたい案件なのでござる!

 せっかくですので【白墨~】の謎解きポイントをいくつかご紹介しておきます。

 まずは、登場人物が皆それぞれにちょとした罪を背負っているので〝怪しいヤツは犯人じゃない〟といった従来のミステリーの法則が通用しません。

 さらに、新本格派によくある大仕掛けのトリックや、オカルト的要因が事件の本質といった様な〝アンフェア〟な謎解きになっていないのもポイントの一つだと思います。

 それでは【白墨~】の最大の謎解きポイントは何かといえば〝自分の思いこみ〟です。ちょっと長くなりますが、含蓄に富んだセリフがヒントになっているので本文より引用させていただきます↓

「自分が求めているのは答えだと思いがちだ。だが、本当に求めているのは都合のいい答えでしかない」

「人が思いこみをするのは、その方が楽で、手間がかからないからだ。そのほうが突きつめてものを考えなくてすむ…… 多くの場合、厄介な問題を。だが、考えずにいることは誤解を生み、ときには悲劇を起こす」

 さてさて、〝自分の思いこみ〟を排除する事により、皆様にも事件の真実が見えてくるかもしれませんよ~!?   さらにその考え方を私生活に当てはめてみれば、悩みの解決法が見つかるかもしれませんよ~。


 〝少年時代&バラバラ死体〟といえば【スタンドバイミー】を思い起こす人もいるでしょうし〝チョークで描かれた人形の暗号〟といえばシャーロックホームズの【踊る人形】を思い出す方もいる事でしょう。しかし、それらはあくまでもちょっとしたスパイスであって、【白墨~】の最大のストロングポイントは、物語の登場人物も、読者である我々も〝自分の思いこみ〟によって真実から目をそらされてしまっているという事に尽きると思います。


 僕は「飲み込め」「飲み下してしまえ」という意味の言葉を「飲っくんじゃえ」と言っていたのですが、「何それ? どういう意味?」と聞かれました。それもつい最近です。調べてみたら方言でした。今までずっーーーと標準語だと思ってたのに方言でした…。

〝自分の思いこみ〟とは恐ろしいものでございます。

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