チャールズ・ウィルフォード著【拾った女】(扶桑社文庫)を読んで

 騙された! まんまと騙された!! ラスト2行を読むまでその事実にまったく気がつきませんでした…。 新幹線の中で読んでいて思わず声が出ちゃいましたよ~ん。ここまで綺麗に騙されるとむしろ清々しいもんですわい。これは読む人が全員騙されるギミックでございましょう。あっ、どうも岩崎(男の方)です。


 今回ご紹介させていただく本は、チャールズ・ウィルフォード著【拾った女】(扶桑社文庫)という本です。

 サンフランシスコの場末。画家になる事をあきらめた男(ハリー)と、ただひたすら不器用にしか生きられない女(ヘレン)。夜のカフェで二人は出会う。アル中の二人は自堕落な同棲生活を始めるが、タナトスに取り憑かれた二人は破滅の坂道を転がり落ちることに… というシノプシスだけを見たら「まんま、酔いどれ詩人チャールズ・ブコウスキーじゃねーか!」と突っ込みを入れたくなる方もいることでしょう。

『アル中』『不器用な男女』『自堕落な性生活』『絵描き』『タナトス』はブコウスキー作品で頻繁に取りあげられるモチーフですが、ブコウスキー作品がシニカルな笑いがあったり、ラストに救いがあったり、何ならその自堕落っぷりがチャーミングにさえ感じる事があるのに対し、【拾った女】は寒々としたハードボイルドタッチで描かれていて、とことん切ないです。ヒリヒリする位に切ないです。まったく救いがありゃしません。とにかくヘレンが自ら進んで不幸になる様な選択をしている感じが悲しいというか、ブルース感なんだよね~。

 ハリーと他の登場人物(バーテン、大家さん、看守、看護師)との会話に妙な優しさ(「何かよそよそしいな~」という感じ)を感じたり、精神科医とのトンチンカンなやりとりを読んでいて「ハリーって、知能がアレな人なの?」と思ったもんですが、衝撃のラスト2行を読んで思わず二度見! これは盲点だわ~。このギミックは日本人だと思いつかないかも。もしくはシンプルすぎて、プロの作家さんはあえて使わない仕掛けなのかもしれません。シンプルなだけに盲点だったわ~。ついつい最初から読み直してしまいました。


 余談ですが、なぜか男は不器用な女に魅力を感じてしまうもんです。不器用な女性、不幸な女性を救い出してあげたくなる男性心理を【椿姫】に因んで『カメリアコンプレックス』なんていうそうでが、程々にしないとハリーの様に身の破滅を招くことに…。くわばら、くわばら。

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