レンタカーを返して帰り着くと、家の前にうずくまる人影。
「誰かおるで。茉莉花やろか」
男の影が立ち上がる。満面の笑みで手を振っている。善光である。
項垂れる馨。
「あかん……コンビニさんや……」
座敷に上がっている善光。
「なんやコンビニさんて、あんときのダメ店員やんか。ホッとしたわぁ」
「ホッとするとこちゃうわ」馨が小さくツッコむ。
「いやぁ、やっとで再会できましたねっ。あのときは本当に申し訳ありませんでした! 非力な僕を臆病者と罵ってください……!」
未散が間髪入れず「ほんま非力な臆病者や」。なぜか感激する善光「有り難き幸せ」。
「あかん……コイツ、Mや……」ガクンとくる馨。
善光が司法試験を受けるために馨と同じ大学に通っていることを話した。
「いいトシしてご苦労なこっちゃ」
「はっ、勿体ないお言葉にございます」
そのうち、腰の低い善光を気に入った未散。
「アンタなかなかええヤツやん!」「有り難き幸せ」
頬杖をつき、溜息をつく馨。そこに茉莉花が訪ねてくる。
「今日は馨君おるん……ハッ…!」なんと、善光に一目惚れの様子。
「茉莉花、こちら善光さんや。今時珍しい好青年やでー」
善光が帰ったあと、一同は会議モード。
「どないすんねん、あのコンビニさん。しつこいヤツやでぇ、ストーカー+Mや」
未散と茉莉花が同時に「ええやーん」。
「ガッコで会うてみ?グリーンのポロシャツにケミカルウォッシュのストレートジーンズに、白いスニーカーやで」
未散と茉莉花、同時に「ええやーん」。
「変態や! ウチ突きとめて待ち伏せやで、キモイやんけ!」
ムキになる馨に、未散と茉莉花は「ええやーん」。
「もう知らんで!ストーカーの怖さ思い知るがええわ! 俺もう知らん!」
翌日。出勤した未散。
「あかん…… ほんまもんのストーカーは、ここにおったわ……」
VIP席で白い歯をキラキラさせて手を振っている英司。
気づくと、音もなく芽衣が未散の背後に立っていた。
「IT社長だかなんだか知らないけれど…… かならずアタシを指名させてやるから。せいぜい今夜は楽しんでよね」
「ドンペリあるだけ出しちゃって!」英司の声がフロアに響き渡り、キャバ嬢たちは一斉に歓声をあげた。
その頃、新宿のラウンジの個室。
「合コンて、コレ……」
呆然としている馨。裕也に無理矢理引っ張られて参加した合コン。相手はなんと、エリ率いる桃園女子大御一行。そこには嫌々参加している葵もいた。
「合宿でさ、ちゃっかりエリちゃんとメルアド交換してたんだよね」ニンマリする裕也。
始めは席が遠かった馨と葵だが『席替え』で隣り合わせになる。
「なんや、悪いな。ナンパとかコンパとか、ヤやろ?」
「めちゃくちゃイヤ」
ニコリともしない葵に、ムッとする馨。
「せやったら来んでもええやろ」
「エリが……どうしてもって言うから。エリが心配だし……」
「エリちゃんは関係ないやろ」
「〝エリちゃん〟だって。馴れ馴れしい」
「なんや、そしたら〝エリさん〟か? どんだけエライんじゃ〝エリさん〟は」
合宿所では、毅然とした葵の態度に『気ぃ強うてミチルみたいやな』と、馨は半ば感心をした。しかし──
『ミチルとちゃうわ。ミチルは、こんな失礼なヤツとちゃう』
──こうして話してみて、落胆させられる。
「とにかく、別に来たくて来たんじゃありませんから」
「……もう来てんやから、しゃあないやろが。どーせなら楽しんだらええやん。礼儀やろ」
「じゃあ、なんかおもしろいこと言ってみて。関西人でしょ」
「東京者は関西人ならお笑い芸人や思うとる。失礼なこっちゃ」
「関西弁って、漫才っぽく聞こえるんだもん。標準語で話したら……フツーにカッコいいかもしれないね……」
恥ずかしそうに俯いている葵。カーッと赤面する馨。
家に帰った未散。
「ああーしんど。シャレにならんわ、IT社長。……馨ぅ〜もう寝たん?」
馨の寝室はカラッポ。
「なんや、おらへんやん」シュンとする未散。「あー!早う話したいわぁ!」地団駄を踏む。
そこに馨が帰ってくる。
「ああ、ミチル。いま、かえったよ。ちょっと、カラオケにいってたんだ。おそくなちゃって、マジゴメン」
「!!?……なに言うてるん??」
「いや、だからぼく、ともだちとのみにいって、カラオケしてたんだよね」
「頭でも打ったんか!? なんやもう、今日サイアクやー!!」
「どうかした?」
「もうええっちゅうてんねん!!」
つづく
リズです♪ タイトルにあるとおり、標準語だからどうこうってことは、わたしにはないです。逆に方言萌えするタイプなので、乙女ゲーでも関西弁キャラは狙っちゃいますね。
もっと秋田弁キャラとか鹿児島弁キャラとか、投入していってほしいっすー!
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