にゃんにゃん探偵チャーリーの冒険 ~ドッペルゲンガー・第一章~

 僕のように「自宅で仕事をしている人あるある」なのでしょうが、「曜日の感覚が少し曖昧になる」ことがあります。先日、いつもより早く仕事が片づいた日がありました。ふと、土日休まずに仕事をしていたことに気がつき、平日の午後、なんとなくこのまま一日を終わらせるのは惜しい気がしました。

 そんなわけで、パソコンを閉じて、ふらっとSOMPO美術館に出かけることにしました。ちょうど『モーリス・ユトリロ展』が開催されていたのです。

 ふつう企画展というと、150点とか200点とか、少し息が詰まりそうなくらい作品が並んでいますよね。でも今回のユトリロ展は、彼ひとりに焦点を当てた展示ということもあって、74点ほど。数が少ない分、作品同士の間にちょうどいい『呼吸』のような間があって、一枚一枚をゆっくり眺めることができました。

 平日の夕方ということもあり、館内はとても静かでした。人の姿が少なく、僕は好きなペースで歩きながら、気になる作品の前で立ち止まり、しばらくしてまた戻って、もう一度同じ絵を見つめる――そんな自由な時間を過ごしました。行列に押されながら「次の絵へどうぞ」と流されるような鑑賞より、ずっと好きです。こういうふうに絵を見るのが、本当の鑑賞なんじゃないかと思いました。

 ユトリロ展で印象に残ったのは、個人蔵の作品が多いことでした。母親とその恋人に作品を量産させられた結果、多くの絵が個人コレクターの手に流れたのでしょう。そう思いながら見ると、どの絵にも少しだけ孤独の影があるように感じました。でも、その孤独は決して暗いものではなく、むしろ静かな安らぎのようにも見えました。

 そして僕の目を引いたのは、彼の代名詞ともいわれる〝白の時代〟ではなく、むしろ〝色彩の時代〟の作品でした。グワッシュやリトグラフの鮮やかな色使いが、まるでどこかの小さな街の午後を切り取ったみたいで、妙に心に残りました。〝白の時代〟の絵は確かにポエジーです。でも、〝色彩の時代〟の、色のある街並みのほうが、今の僕の心を少し軽くしてくれる気がします。

 帰りに立ち寄ったミュージアムショップは、いつもより静かで、少し寂しげに見えました。お客さんが少なかったせいか、それとも僕がユトリロの余韻を引きずっていたせいなのか… たぶん両方だったのでしょう。

 それでも、そういう少し曖昧な時間が、「曜日の感覚が少し曖昧になる現実世界」ではなかなか味わえない〝外の静けさ〟のようで、悪くありませんでした。あっ、どうも。岩崎(チャーリーの飼い主)です。

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